『Calling 2』 トリコマ(2014/1/19)

・続き。まだ続きます。












「今日はオレの好きなようにしたい」
「え」
いつも好き勝手にしているじゃないですか、と言う言葉が口からこぼれそうになったが、そこはひとつ、空気を読んで飲み込んだ小松。
「えと…どうぞ…?」
なにかしろの意図があるにせよ、トリコがわざわざ宣言したのだ。小松に拒むつもりは毛頭ない。
「乱暴にしたいとか、怖い思いさせたいわけじゃないから」
と、口を噤んだ小松の不安を明確に読み取ったトリコはそう告げた。
「はぁ、そうですか」
ならいいです、と。
「ちょっとくらいなら乱暴でもいいんですけど」と小さく呟やかれた小松の声は、是をもらえて舞い上がっていたトリコの耳には残念ながら届かなかったようだ。



本日の業務を定時で終えた所を、テリーの背に乗って職場に迎えに来たトリコにほぼ拉致当然にかっさらわれ、トリコが拠点とするスイートハウスに連れてこられた小松。
明日、明後日と連休予定の小松と甘い蜜月をすごいしたいと願う、恋人としては当然の権利を行使するべくトリコは二人きりで家に引きこもって過ごそうと目論んでいた。

二人でいられるのなら外出してもよかったのだが、いかんせん知名度の高い二人。
どこにいようとも身バレし、ちょっとした騒ぎになってしまい落ち着かない時を過ごさなければいけなくなる事に少々うんざりしていた。
かと言って遠出をしようものなら短期間では帰ってこれないので、それなら二人で家でゆっくり過ごそうかとの消去法での選択であったのだが。
が、トリコにしてみれば棚から牡丹餅、重畳でしかなかった。
そうと決まれば少しの時間ですら惜しく無駄にしたくないので仕事上がりの小松を拉致り、テリーに超高速で走ってもらって帰宅する。
季節は冬。いくらトリコが全身で包み込むように小松の肉襦袢と化しても万全ではなかったらしく、家に辿り着いた時、小松は歯の根が噛み合わぬ程震えていた。
トリコはあわてて小松を風呂場に押し込むと熱い湯をはり、室内の温度を上げるべく奔走した。
普段トリコが一人で過ごすためのこの家には暖房器具など備え付けてはいない。
今度からは小松用に簡易ヒーターでも買っておこうと心に書き留めておく。
ありがとうございました、と全身を温めた小松がほかほかとした蒸気とともにトリコの元に歩み寄る。
格好はトリコのシャツを一枚引っかけただけ。その下には短パンも履いているのだろうがシャツに隠れて見えはしない。
くあ、っとトリコ自身の体温も上昇した。
(なんつー無防備に…ああ、もう可愛いなぁコイツ)
など邪な想いに駆られ、あともうほんの少しで触れるところまで手を伸ばした所でぐぅ、とトリコの腹が鳴った。
「トリコさんも入ってきてください。その間に夜食作っておきますから」
とくすくす笑いながら台所に行こうとするが、腕をとって反対方向へと踵を返す。
「駄目だ、毛布にでもくるまってあったまってろ」
「ええ〜もう十分あったまりましたよ」
「いいから、オレもすぐ入って出てくるから大人しく待ってろ」
は〜い、としぶしぶといった風でベッドにもぐりこむ。
それを確認してトリコはさっさと風呂場に行くと手早く服を脱ぎシャワーを浴びた。
時間にして数分か。多分10分もたっていないであろう。
だが浴室から出てみると、鼻をくすぐるたまらない匂いが部屋に充満していた。
「…こーまーつー」
「えへへ、だって」
少しばつが悪そうにはにかんだ後、はいどうぞと机の上にはところせましと並べられた数々の皿を勧めてきた。
「簡単なものばかりで申し訳ないですが…少しはおなかの足しになればいいんですけど」
「毛布にくるまっとけっていっただろ」
「もう寒くないから大丈夫ですよ。それに料理してた方が火にも近いし身体動かしてた方があったまるし」
それに、と上目づかいにトリコに視線をよこす。
トリコさんがすぐにあっためてくれるんでしょう──
言葉にはされなかったが、間違ってはいないだろう。
こくり、とトリコの喉が上下する。
「ちょっ…!トリコさん?!」
無言で手をとり、寝室へと連れていく。
「ごはん…」
「後でいい」
正直後ろ髪ひかれるが、それよりも小松を今すぐ貪りたい。
小松はなにか言いたそうだったが、黙ってトリコに連れられるがまま歩を進めた。


そして冒頭に至るのであった。



すみません、実践まで行きませんでした(笑)
つぎこそ…!






※閲覧ありがとうございました。