『甘イ毒ニ溺レマショウ。』ココマ/R18(2014/2/18)
・266話のネタバレサイトをみて、想像で妄想して勢いで描きました。
・賛否両論あると思いますが、私はショックでした(*;´□`)ゞ
・本誌をまだ手に入れてないので完全に想像を元に描いてます。
ネタバレしてますので、本誌を手に入れてない方、コミック派の方は見ないでください…!!!
 それでもいいって方は…どうぞ…!↓



『甘イ毒ニ溺レマショウ。』






つけこんだ。

恥も外聞もない。
ただ転がり込んだチャンスをものにするために。








あの時、あの場所で、小松を見失った。
彼の姿は一寸前とたがわぬまま、自分の横に存在していたというのに。
視界に彼の実像は捉えていた。
実際に消えたわけではない。

言葉通り見失ったのだ。
「小松の存在が消えた」
そう感じた。

いつも温かく、穏やかに彼を包み込んでいたものが一瞬にして色を失った。
昏い色に変わったわけでもない、怒りでもない。
ただ消失した。

我が目を疑った。
視力が良いと自負しているだけに、その感覚を信じることは難しかった。
驚きのまま、目をしぱたかせて、確かめるように、探るように彼を観察した。

普通に見えた。
いつもとただ変わりなく。
先ほどのトリコの発言に驚いてはいるようだが。

彼をとりまく色だけがなくなったのだ。

ふと一瞬、小松と目が合った。
そして逸らされた。
はじめての事だった。

彼は自分の眼から隠れるように、さりげなく移動し、騒ぎ立てるサニーとトリコを諌めようとした。
努めて普通に。

「見ないで」
と言われた気がした。

にぎやかな場をいつも通りの態度、対応で皆と会話をしているその彼の手は、よほど強く握りしめられているのか、色をなくして白く浮きあがり、かすかにふるえていた。
そしてはやり彼を取り巻くオーラは、ボクには見えなかった。






あの後、トリコを力任せにぶん殴った。
毒は一切にじませてはいない。
ただ、渾身の力で、己が拳をふるった。

トリコは避ける事もせず甘んじてボクの攻撃を受けた。
「お、まえは…!小松くんの事をどうするつもりだ?!」
「あ?」
口の中が切れたのか、腕で口元を拭っている。
手の甲に少し赤いものが滲んでいた。
「どーもしねぇよ。何もかわらない」
「小松くんの気持ちを考えた事あるのか!」
「お前には関係ない」
ぴしゃりと切って捨てられた。

ああ確かにトリコと小松くん、二人の問題だ。
今のボクには口出しする何の権利もありはしない。

──…なら、ボクの気持ちもお前には関係ない。

ココは黙って踵を返し、その場を後にした。

(小松くんはお前の物じゃない)
そう胸中で呟いて。








つけこんだ。

それ以外に言いようがない。
あの時、ボクは浅ましくもチャンスだと思った。
優しさでも同情でも憐憫でもなく。
機会が訪れたのだと歓喜した。


「…コ、さん──…」

腕の中で身じろぐ小さな身体に愛撫を与え続ける。
「──…達けない?」
はぁはぁと苦しげに息をつき快楽に身を捩らせながらも小松は達せないでいた。
彼の中心部は熱く硬くそそり立ち、今にも精を吐き出したいと限界を訴えているのに、それは叶わずにいた。


あの後、言葉巧みに小松をホテルの一室に連れ込んだ。
小松はただ黙ってついてきた。

部屋に入るなりココは事におよんだ。

衣服を剥ぎ取り肌に触れた。
言葉を交わすことなくただ沈黙と僅かな衣擦れだけが部屋を支配した。

小松の眼がじっとココを見ていた。
いや、ココを見ていたのだろうか?

ココも逸らす事なく視線を交じわらせた。
瞳の奥を覗き込む。
揺るいでもいない。虚脱でもない。
ただココの真意をさぐっているかのようだった。
だが、あいかわらず色が無かった。

ひやりとした体温がココの掌に広がる。
彼はいつも温かかった。
微熱でもあるのではないかと心配するほど。
小松は平熱が高いから平気ですと言っていた。

…人は感情で無意識に血流を支配するのか。
彼の指先が、腕が、肩が、胸が。
蒼白。
蒼く、白い。

己の体温を移すようにじわりと撫でさする。
うっすらとかいた汗が冷えてより体温を奪ったのか、ふるり、と小さく震えた小さな身体。

手の平を包み込んで息を吹きかけてやる。
軽く握りこまれた拳を指先で広げると、爪の跡がくっきりと残っていた。
「…料理をするために欠かせない、大切な手なのに」
「誰のために?」
発言をした小松はすぐさま息を飲んだ。
失言した、とはっきりと顔に書いてある。
「…君のためだよ」
誰でもない、君自身のためだ。
手の平を揉みほぐしてやる。
小松はこの部屋に入って初めて、眉間にしわを寄せた。

「…泣かないんだね」
「…どうして?」
泣く必要などありません、と。
「そう?君ほど表情豊かな人を他に知らないから」
ここは泣く場面かなと想像したんだけどね、と軽口に乗せて。
「だって君は今、男に連れ込まれて、無体な事をされているんだよ?」
「───…」
それでも嫌がる素振りを見せない小松にココはのしりと覆いかぶさる。
またも無言で作業をすすめる。
小松のペニスに手をやると、少し強めにこすり上げる。
う、っと呻き声を上げる小松は逃げもしない。
ただ、解放できない苦しみに耐えている。


小松の中で、最後の何かが踏みとどまっている。
それは”裏切り”と言う今のこの状況なのか。

誰が、誰に対しての”裏切り”だというのか。

ココには想像するしかない。
彼らの関係が、絆がどれほどのものなのか。
二人にしかわかりえない。

それがもどかしくもあり──…
許せなくもあった。

トリコを想う小松──
この状況にあっても、アイツに操をたてるというのか。

──先に裏切ったのはアイツなのに?



「小松くん───…」
口内に毒を精製し唾液に混ぜ込む。
そしてゆっくりと小松の唇におのれのをぴたりと合わせ、注ぎ込む。

はじめてのキス。

この行為の最中はじめての口づけ。
彼の体中にいくつもの口付を落としたが、唇には触れなかった。

ココの中でそこは最後の砦であり、触れてはいけない聖域だと、本能が告げていたから。
だが、一度触れてしまえば──…

多量の唾液を送り込み、コクコクとそれを嚥下する彼を見下ろして昏い歓びに身体が震えた。

小松はただ目を見開いて受け入れた。
流し込まれるソレをひたすら飲み込んだ。

「──毒だよ」
うっそりとそう告げると、妖艶に瞳を細め、再び彼に口付けた。
「だから、小松くんの所為じゃない」
ボクの毒がもたらす作用だから。

安心して──?

そして同じ毒を掌に滲ませると、おもむろに小松のペニスを握りこみ、軽く上下させた。
「あ!──ッア、アッ!!」
呆気なく小松はココの手に解き放った。
「コ、コさん…」
「うん」
達けなくてつらかったでしょう?
宥める様に小松のモノで汚れていない手で頬をさする。
どうやっても解放できなかった熱を漸く解き放ち安堵のため息をついた小松は目を閉じた。
その瞼に口づける。
「毒の作用だよ」
小松くんの感情は関係ないから安心して。
そういうと驚いて目を開けた小松はココを凝視した。
「───ずいぶんと、甘い毒ですね」
小松は力なく笑った。
「君に合わせてあげたんだよ?」
甘いの、好きでしょう?

毒が甘いのか、ココが甘いのか──…

「だから、毒の所為だから──」
いっぱい、泣いていいよ。
啼かせてあげる。
毒の所為だから、と。

小松の顔が苦痛に歪んだ。
「泣きたいなんて…思ってません」
「うん、君の感情は関係ないんだ。ボクが泣かせたいんだよ」
「──甘すぎ、ですよココさん…」
もっと苦くていいのに…

ココは手を伸ばし、小松の涙を拭う仕種をする。
小松の頬には一滴の涙も流れてはいなかったが。

「どうせ、なら、ぐずぐずにボクを溶かして、消してくれればいいのに」
この醜い感情ごと、全部。
ぽつりとこぼれたのは本音か。

今のココには簡単すぎる願い。
人ひとり、跡形も無く消し去るなど造作もないこと。
それこそ骨のひとかけら、塵一つ残さず消滅させることは容易い。

だがココはそれを望まない。
許さない。



ゆっくりとした動作で小松の全身に触れていく。
小松の形を確かめる様に。
その感覚に小松は震えた。
ただ触れるだけの所作で、毒が回った全身は熱を帯び、快楽を高めていくのだろう。
洩れる吐息を噛み殺す様に、喰いしばった歯から切なげな声が洩れ出でる。
「…ごめんね、トリコの手じゃなくて」
トリコの代わりになれなくて。
「代わりになんか───ッ」
声を荒げた小松は、すぐに言葉を飲み込み、悲しげに眉を顰めた。
「ココさんはココさんです。誰の代わりでもないし、誰の代わりにもならないです」
そしてはじめて、小松からココにさしのばされる腕。
「ごめんなさい。それを言わせたのはボクですね」
そう思わせるのも。
ココを確かめる様に、頬を、首筋を逞しい腕を伝い触れる小松の指。
「ココさんが──アナタがいてくれて、良かった」
ボクは酷いですね。
自嘲して、ココの肩口に顔を埋めた。



だから小松は気付かなかった。

ココの顔に浮かんだ昏く歪んだ笑顔に。




(最低だな、ボクは)
自覚はある。
でも止めようとも思わない。

けなげに身を震わすこの腕のモノを手に入れる為なら───


卑怯と罵られようとも。
蔑まれようとも。


(さぁ、早く───)

「ここまで堕ちてきて」


(甘い、甘い毒で満たしてあげるから)










・…ココさん頑張って!






※閲覧ありがとうございました。